こんにちは
今回はアスベスト調査について説明していきたいと思います。
せっかく調査者の資格をとったのでこの記事を書かないわけにはいかないと思っています。
これはアスベスト?の記事でも大まかな流れでの調査方法は説明しました。
今回はもう少し具体的に説明していきたいと思います。
1.建物の年代調査
アスベストの規制に伴い、
平成18年9月1日以降アスベストの使用は特例を除き原則使用禁止になりました。
つまり、アスベストの調査は
平成18年9月1日以降に着工した部分についてはしなくていいとされています。
※今後の石綿則や大気汚染防止法の改正の中で、「事前調査結果の届出」が必要になる見込みです。事前調査とは、「分析調査」だけでなく、「設計図書による調査」や、「現地調査によう調査」も事前調査に含まれます。
そのため、事前調査結果は建築年代の調査も含まれるため、ある程度の工事規模(今のところ請負金額100万円とされています。)以上の工事はすべて届出対象となる可能性があります。
どのように建物の年代を調べるかといいますと
1)設計図書による調査
図面上に工期や竣工日が記載されていることがあります。
また、図面の作成日より、大体の建物の年代が想定できます。
2)建物謄本による調査
建物謄本を取得することにより、いつその建物が登記されているのかわかります。
3)現地確認による調査
建物に入るときや、道を歩いているときに、建物の入口の隅等に、
「定礎」
と書かれた石板を見たことはないでしょうか。
この年月により、竣工年月を確認することができます。
以上が挙げられます。
2.設計図書の確認ポイント
設計図書による調査といっても、建物の規模が大きくなると、その図面の数も膨大になります。資料に一つ一つに目を向けるのも大事ですが、それでは時間がかかり過ぎてしまいます。
私の場合、確認するのは
1)設計概要
建物の構造、大きさ、施工年月日等の情報が載っています。
建物の構造としてはW造・S造・RC造・SRC造等により、
求められる耐火仕様 (アスベストが使用される目的の1番)が異なるため、
施工年月日と同じくらい把握しておくべき情報かと思います。
2)特記仕様書
建物を設計するにあたり、使用する材料や施工方法が細かく記載されています。
「鉄骨工事」や「左官工事」等のところに耐火被覆が使用されている場合のその
仕様が明記されていることがあります。
3)仕上表
外部・内部共に使用されている仕上材が明記されています。
特にボイラー室、電気室は防音や断熱目的でアスベストが使用されることがあり、
仕上表に
「吹付石綿」や
「岩綿吹付」、
「ロックウール吹付」等記載がある場合は
要チェック!です。
また、最近は外壁・内壁の石綿含有仕上塗材がチェックポイントになります。
外部仕上表の外壁欄に「吹付タイル」や、「リシン吹付」等があった場合は
要チェック!です
4)矩計図
建物の断面の詳細が明記されています。
特に見るべきが、鉄骨がある場合のその耐火処置、最上階の天井裏の断熱処置、
煙突がある場合の断熱処置、カーテンウォールが有る場合の耐火・結露防止処置
等が確認できます。
この図面のある無しでアスベスト調査の進捗がかなり変わります。
5)平面図、立面図、階段詳細図
建物の平面配置、また、外部の仕上げ、階段の仕上の詳細が明記されています。
平面図や立面図により煙突の有無の確認ができます。ボイラー室を探しそこに
○があれば煙突の可能性大です。
また、階段詳細図には仕上表に書かれていない情報が書き込まれているケースが
多いです。
階段の段裏は仕上表にない「リシン吹付」だったりすることがあります。
その他、設備工事の図面内に配管の保温材の仕様等が書かれていますが、現地での確認がほとんどになります。
3.現地調査(目視調査)
建物の詳細を頭に叩きこんだところで次は現地調査になります。
現地調査の留意事項として、依頼人との待ち合わせよりも少し早めに行き、
外部仕上の確認、定礎の確認、増築の有無、建物の構造等を把握しておきます。
調査の際は「アスベスト」や「石綿」等の情報はなるべく伏せておく配慮が必要です。
また、依頼人より、建物の情報(改修履歴の有無や、建築年の確認)を聞き出すのも
テクニックとなります。
特に図面がない場合は少しでもアスベストにかかわる情報を入手しておく必要があります。
現地調査の際に通常では目に見えない隠れた部分にも目を配りましょう。
その際に、「破壊調査」が可能かどうか確認を行い、少しでも調査の漏れがないようにします。
※建物維持管理のための調査の場合、破壊調査はあまりする必要はありません。
点検口を除いたり、細かいところはファイバースコープ等を使用して調査します。
4.分析調査
最後に工事や建物維持のために必要な検体を絞り、分析調査を行います。
資料の採取は
”石綿則に基づく事前調査のアスベスト分析マニュアル”に基づいて行いましょう。
マニュアルを要約すると、
1)試料を採取する際は、保護マスクの着用など、曝露対策を行う。
2)試料を採取する際は、周辺を立ち入り禁止にする。
3)試料を採取する際は、採取場所を湿潤化する。
4)検体は3ヶ所以上から採取する。
5)異なる検体をひとまとめにしない。
等です。
特に吹付け材など施工方法によりムラが生じやすい建材は3ヶ所以上から採取する必要が有ります。
ここではアスベストが出なかったけど、ここからは出た!なんてこともたまに有ります。
また、フロア毎に耐火被覆の施工業者が変わることもあるため、フロア毎に調査するのも有効です。
分析方法は
1)定性分析…建材中にアスベストの有無を調べる方法
①JIS A 1481-1
偏光顕微鏡による定性分析
仕上塗材の調査や複層になっている建材はこの分析方法で分析
しましょう。
②JIS A 1481-2
位相差顕微鏡による定性分析
-1と違い、分析者の熟練度がそこまで要求されません。
2)定量分析…建材中のアスベストの重量比を調べる方法
①JIS A 1481-3
X線回折による定量分析
②JIS A 1481-4
偏光顕微鏡による定量分析
※定量分析は定性分析でアスベストが出た場合行います。
JIS A 1481-1の定性分析で出ていた場合、アスベストの推定含有率は
・不検出
・検出
・0.1%超5%以下
・0.5%超50%以下
・50%超100%以下
の5段階に分けられます。
検出された場合、定量分析により、0.1%以下であることが確認できれば、
非アスベスト建材として処置できますが、そうでない場合、アスベスト建材
として処置する必要が有ります。
そのため、多くのゼネコンは定性のみを行う傾向になってきています。
以上、簡単ですが、これだけ覚えておけば大体調査が可能かなと思います。
ただし、アスベスト調査ではアスベストに触れる可能性があるため、石綿作業主任者や
アスベスト診断士、建築物石綿含有建材調査者等のアスベストに対する知識がある人が行わなければ、アスベストの曝露、飛散の災害につながる恐れがあります。
また、解体工事や改修工事においては、防火区画や、建物の構造について有る程度の知識がある人が行う必要が有ります。
カーテンウォールの裏打ちや、外壁とスラブの層間措置、エレベーターシャフトの構造等
通常見えないところにアスベストが潜んでいることは多々あります。
特に竪穴区画はアスベストの見落としが多く、解体工事や改修工事において、アスベストを飛散させてしまう可能性が非常に高いと思います。
”今回の調査では調査できないが、アスベストがある恐れがある”ということを調査依頼者に説明する等して、記録として残しておくことが大切です。
また、調査者の信用のため、採取の写真や採取ヶ所の記録等も残しておくことが有効です。
※一度にブログ記事を書くと、書かなければいけないことを落としてしまうこともあるので、この記事は少しずつ修正・追記を行い仕上げていきます
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